東京高等裁判所 昭和58年(ネ)2646号 判決
営業譲渡がなされた場合において、譲受人が譲渡人の商号を続用するときは、譲渡人の営業上の債権者は、通常営業主の交替を知らないために、また知っていても譲受人が債務の引受をしたものと考えて、営業上の債務担保に機能している営業財産に対して債権保全の措置を講ずる機会を失う等のおそれが大きいことから、商法二六条一項は、商号の続用を要件に、営業譲受人に対し譲受人と同一の弁済義務を負担させたものと解される。そして、本件におけるように、営業譲渡の前後を通じて営業の外形にほとんど変化がなく、屋号が商取引上当事者を特定する上で重要な機能を営んでいる場合において、営業譲受人が譲渡人の屋号を続用するときは、営業債権者が営業主の交替を容易に知り得ないことは、狭義の商号が続用される場合と何ら異ならないと考えられるから、このような場合も商法二六条一項にいう「譲渡人ノ商号ヲ続用スル場合」に含まれると解するのが相当である。
(高野 根本 成田)